日垣隆『ラクをしないと成果は出ない』は実用的な自己啓発本。

著者のサイトで全目次が公開されている。この目次が本書のメインコンテンツなんじゃないかと思う。
ラクをしないと成果は出ない 目次
各項目については、ふーんで終わるもの、目次のタイトルだけで取り入れようと思うもの、目次だけじゃイメージがわかず、本文を読んでなるほどと思うものがあった。たぶん人によってその項目は違うんだろう。以下に僕の気になった項目を紹介する。

 7 よくわからなかったら現場に行って考える
 15 興味がわいたことは講演やセミナーに出て、全体像と情報源を一気に押さえる

これは実感としてあって、かなり有効な方法だと感じている。知りたいことは詳しい人に聞くのが一番。現場もセミナーも一緒で、知りたいことの全体像が一気にわかるし、逆に知りたい情報がまとまったような情報源がないことも、そこで確認できたりする。そこでは情報の発信者の顔まで見えるので、その情報が信用に足るかどうかという判断までできる。
もうひとつのポイントとして、講演会はざっくばらんなものを選ぶのがいい。決められた業務として開かれるようなお堅いセミナーだと、資料の通り一辺倒の説明で終わり、質疑応答もないようなこともある。そんなのは読めばすむんだから、わざわざセミナー開くなよと思う。講演者が自分の思いたっぷりに語ってくれるセミナーの方が、専門家が価値判断したあとの情報を得ることができるし、たとえ自分が求めている情報が得られなくとも、そういうことを相談できる場と、そういう質問に熱心に応えてくれる。なによりいいのがセミナーのあとに懇親会を設けているようなところ。話す量が増えるだけ互いのことが知れるわけだから、より精度の高い有益な情報が得られる。それに、自分の興味のある分野のプロなのだから、そんなかたとお話しするのが刺激にならないわけがない。



 9 自分に対する相手の優先順位を上げてもらうことが仕事の基本
いつも気持ちよく仕事ができるA社の○○部長。飲みにも連れて行ってくれるし仲もいいけれど、しょっちゅう遅刻してきたり、「悪いね、月曜日の打ち合わせ、日程をずらしてくれない」としばしば言われていませんか?

仕事相手と仲がいいことと、相手の中で自分の優先順位が高いことは別という話は目から鱗だった。
そういう目で仕事のつきあいを見直すと、思わぬ発見がある。

 21 いざという集まりには万難を排して参加する
 25 お願いした場合は「いつでも」と言う
 27 人から薦められたものは、無理をしてでも即日取り入れる
 69 「約束の優先順位」を見直すクセをもつ

自分の中での優先度が明確になるし、自分がその集まりを優先してるっていうのが伝われば、ほかの参加者も悪い気はしないよね。
自分の中での優先度が高いことを伝えるという点では、25も同じ。スケジュールがいつでも空いてるから「いつでも」ではなくて、ほかのスケジュールをずらしてでも優先するということを伝えるのが大事。
27も基本は一緒で、おすすめされても取り入れなかったら、次からおすすめしてもらえなくなる。相手とよい関係を築く上でも、すぐ取り入れるのは有効。
それを逆手にとったテクニックとして、場の価値を高めるために、遅刻、キャンセル厳禁にして、その集まりの優先順位を高める方法が69で紹介されている。

 24 会いたい人にはできるだけ向こうから望んで会ってもらうように仕向ける

24、具体的には、会いたいことを相手に直接言わず、周りに言うようにするのがいいと。そうじゃないと、会ったところで自分が出せずに終わってしまい、相手も得るものがない。

「当たって砕けろ!」で突撃すると……。ほんとうに砕ける。(P.67)

実体験からもそう思う。

 22 アイデアは他人の頭で揉んでもらう
 87 「新鮮でおもしろいこと」は三〇秒で説明する

そのアイデアがどれだけ人の興味を引くかも、似たようなものがないかも、ちゃぶ台がひっくり返るような大きな落とし穴がないかも、さらに発展させることができないかも、一人で考えてるより周りに話してみたほうが得るものが大きい。そういう意味でひらめいったーサービスはいいと思う。
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87も似たようなもので、自分がおもしろいと思ったトピックが、他の人にどう思われるかというのは、知っておいた方がいい。その上で、30秒で話すというのは、そのおもしろさのエッセンスを抽出する訓練にもなる仕組みだ。

 35 NGな人には説明しない。NGな人とはモメない
自分が説明するのであれば「この人は一生懸命に話をするに値する人だ」と思える相手に限定しましょう。(P.91)
 40 NG上司に煩わされない
 60 今いるメンバーを前提にする。「上手くいかない」のを彼らのせいにしない

どんなところに行ってもNGな人というのはいるのだから、そんな人にかかずらってたら無駄だよという話。こういう人との関係は、自分の方が正しい、相手がだめだという頭があるから、相手を正してやりたい気になりがちだけど、それは無駄。
40も一緒で、煩わされてる時点でその上司に負けてると。どちらにしろうまくあしらうのが正解。
これが経営者やリーダーの見方になるとちょっと違う。NGメンバーを首にしたり配置換えするなんて、そのメンバーがよっぽどやらかさないと難しい。これを踏まえると、管理者は今いるメンバーでベストを考えないとならない。「あいつは使えない」と言った時点で管理者としてはNGというのは目から鱗

 48 「やりたいこと」を周囲に話しておく

自分の動機付けのためによく言われていることだけど、ここでは話が伝わっていた人から思わぬバックアップが受けられる可能性が言われている。思っているよりみんな自分に協力的で、協力できそうなことがあれば声かけてくれるものなんだと思う。

 41 本当に「良いもの」は自分で売ってみる
 46 最初から必ず黒字にする

独立編は、いつか起業してやるんだという人向けに書かれたというわけではない。著者は、すべてのサラリーマンに副業を勧めている。46は、その副業を最初から黒字にすべきという話。
副業の大切さは、41で身にしみた。自分でものを売る経験がないけど、きっと大事な経験なんだと思う。

 44 自分の仕事が黒字になっていなかったら、絶対に会社を辞めない

その道で食っていこうと思ったら、会社での自分の仕事が黒字になってないと、独立しても難しいよという話だけど、それより自分が黒字かどうかを知るために会社の仕組みを勉強する、というところが大事なんじゃないかと思った。

 84 アウトプットしないものはインプットしない

こういう風に働くことが「効率的に働く」ということ。求められていないことに拘るのは、それが自分のためになるならいいんだけど、そうでなければ無駄になってしまう。
とはいえ

 5 「ぜひ続編を」に即対応できるよう、素材は使い切らない

というのもある。
意識して使い切らないんじゃなくて、泣く泣く切り捨てた部分が、次の仕事に活かせるよという話。そんな材料をもつには、それなりのインプットが必要だと思う。
逆に言うと、あり合わせの材料で何とか間に合わせるような仕事のやり方だと次が続かないんだろう。
全部アウトプットするつもりでインプットするけど、少し使えないものが残る位のバランスが理想的なのかな。

 94 加齢とともに遊び時間を増やしてゆく

よく言われている、オフのスケジュールを先に入れることが、ここでも推奨されている。僕も意識してやってみたら、オフにかぶってきた仕事は調整して別な人がやることになった。代替が効くならそれが一番。
もうひとつ、生活技術編では子供の目線が意識されている。
遊ぶ時間もなくいやいや働いてる姿は、子供の目にどう映るのか、書斎がなく今でごろごろしている父親は、子供の目にどう映るのか。これは自分が子供の頃を思い出せば、自分が親としてどう振る舞うべきかが見えるんじゃないかと思う。


あとは、具体的なテクニックで、気になったものを。

 14 若いうちはテーマなしで一日一冊、四〇代は一日で五冊

やりたいけど、大変そう。でも一気に読んだ方が理解度が高いというのはその通りだと思う。読書の基礎体力っていうのもつけときたい。

 17 ブログを世界中の井戸端会議における、「立ち聞き」として活用する

「フランスにおける病跡学についての研究文献」を調べるのにフランス語で「Pathography」そのあとに「日本」で検索するというのはいい方法だと思った。みんなやってるのかな。

 19 発行部数数千部のメルマガや専門誌や白書類にたくさん目を通す

具体的な雑誌名として『IDE 現代の高等教育』『証券アナリストジャーナル』『国際人流』『ソフトボールマガジン』『中南米マガジン』『日経デザイン』が挙げられていた。自分の知りたい分野について知るのに、雑誌はいい入門書になる。

 29 自分の実力をマッピングしておく。身の丈を知ったうえで見栄を張る

自己分析の方法として、縦軸に独立心と協調性、横軸に創造性と繊細さをとって、自分をマッピングする方法が紹介されている。ここでなるほどと思ったのが、同僚なども自分と比べながらマッピングすること。そうすることで、相対的な自分の位置が見えるから、自己分析も独りよがりなものにならずにすむ。

 34 自爆しない

嫌なことを屁理屈こねて伝えると、論破されがちだし信用も失うから、正直に嫌な理由を言う方がいいということ。正直が最大の戦略。

 52 「なるほど」と思ったことは、二四時間以内に「やる」メドをつける

いいなと思っても手をつけられずに風化してしまうことはよくあるが、それを防ぐ仕組み。やろうかやるまいか悩む時間があるなら、こういう仕組みを作ってどんどんやってしまう方がいい。

 62 会議や集会は、参加者全員が「待ち遠しい」仕掛けをつくる

具体的には、会議での議題に対して、をあらかじめMLで案を出し合っておくという。試してみたいけど、それは今度の打ち合わせで相談させてくださいとか言われそうだ。自分もよく言ってるし。

 66 どれくらい時間がかかるかは先に訊く。ギャラも先に決めておく

具体的なテクニックとして、値段より先に時間を聞くのがいい。そうすると安くしやすいし、たとえやすくなくとも短期間で結果が得られる。

 75 「遅刻してしまった!」を先にイメージする

悪い事態を想定しておけば、そうならないような対処ができるという話。僕は道に迷うことが本当によくあるので、時間に余裕を持つことと、あらかじめ地図を自分のノートに書き写して、ある程度頭に入れておくようにしている。

 77 レファ本の常備は時間を節約する

辞書なんかはあらかじめ選別された情報が載ってるし、その本を買うときに自分が一度選別しているわけだから、ネットで検索するよりも質のいい情報が確実に手に入る。

 79 一万円札と名刺は三ヵ所に入れておく

常々いざという時のお金を定期入れに入れておこうと思いながらできないでいる。現金がなくて困る場面というのは結構あるので。
あと、無印の小さい付箋。これもいろんなところに点在させている。まさにユビキタス

 81 ノウハウはどんどん公開する

ネットで人のノウハウに助けられている身としては、そこに貢献したいという感情が生まれるというもの。ノウハウを言語化することで、自分のなかでノウハウが明確になるという利点もある。

 83 「本格的に勉強したい」分野の仕事を引き受ける

そういう仕事が来ることなんてあんまりない気がするんだけど、上司にちゃんと自分の志向を伝えていれば、それに近い仕事ができる可能性も上がるし、そういうのを優先していけば、自分の勉強にも、実績にもなる。


付箋貼ったところをまとめてみたら、結構なボリュームになった。大きな気づきはないけれど、いい本だったのだろう。

ラクをしないと成果は出ない

ラクをしないと成果は出ない