おすすめマンガご紹介。

年末なので今年読んだマンガの中から面白いものでも紹介しようかと思ったけど、今年読んだっていうのはおもくそ主観的だしかといって今年出たマンガとなるとわからないので、特にそういう縛り無しでおすすめマンガを紹介しようとして書いているうちに年をまたいで元旦が終わった。面白かった順に紹介。同じ☆の中でも上下があります。
評価基準は☆5つ...すばらしい、4つ...とてもよい、3つ...まあまあよい、2つ...普通、1つ...駄目。

☆5つ

岩明均ヒストリエ

岩明均はすごい。話を斜め上から見下ろしてる感覚がある。登場人物も飄々としているからそういう風に感じるんだけど、その飄々としている奥に感情を押し殺しているような所まで描かれている。たまにそれが表出する。この辺の描き方というのがすごい。
ヒストリエアレキサンダー大王の書記官エウメネスを主役に据えた歴史マンガ。過去にあったことは淡々と記録されているが、でもその奥には多くの人のそれぞれの思いがあって、それが絡み合った結果が歴史で、そういうものに岩明均の表現はとても合っている。
そういう意味では『雪の峠・剣の舞』もいっしょ。

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

雪の峠・剣の舞 (KCデラックス)

雪の峠・剣の舞 (KCデラックス)

あと、岩明均の著作はこのくらい。風子のいる店は未読、寄生獣はもう一回読みたい。
寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)
七夕の国 (1) (ビッグコミックス)
ヘウレーカ (ジェッツコミックス)
骨の音―骨の音 (モーニングKC)
風子のいる店 (1) (講談社漫画文庫)

へうげもの山田芳裕

時代もの。最初は茶道具の名器に人並みはずれた執着を持つ主人公の古田佐介が、戦国時代の歴史の流れを横目に見ながら茶道具を愛し、信長をはじめとする偉い人たちにかわいがられるマンガかと思っていたら違った。
古田佐介は、後の古田織部織部焼創始者
戦国時代後期、まだまだ時代が動いているころが舞台で、その辺の大きな動きというのもしっかり描かれているが、それを茶の湯、数寄、数寄者の視点で描く。
当時の数寄文化は、茶の湯茶道具に限らず、グルメやお洒落などを包括している。その中心にはやはり茶の湯で、そこには千利休がいる。そして当時の政治では茶の湯が重要な役割を果たしていた。互いに身分や所属を越えて、腹を割って話をする場、そういう機能があった。
あったと言ったって、戦国物は司馬遼太郎の『国盗り物語(一) (新潮文庫)』くらいしか読んでいなくて、そこからの知識なのだが、『国盗り物語』でも明智光秀細川藤孝の密会や、明智光秀足利義昭がべったりするのに使ったりしていた。
大事なことは茶の湯で決まる。
そういう歴史的な大事な場面ではあるんだけど、一方で茶の湯本来の趣味的な部分もある。秀吉なんかは茶の湯はほぼ政治の道具として使っているし、光秀は楽しみつつもほんのり政治的な意味を込めるようなことをする。利休はもちろん茶の湯大事でそのために政治を動かそうと茶の湯を使ったりする。一方古田佐介と言えば茶の湯大好きで純粋にそれを楽しみ、武将としてはそれを武器に調略を成功させたりする。この辺りが壮快。
中心に茶の湯があって、それぞれがそれぞれの距離感で茶の湯と関わり、茶の湯で周りが回り、周りに茶の湯がまわされる。このダイナミズムがおもしろい。
あと古田佐介が茶の湯にほうけるさまも楽しい。
小さな窯の社長をやられている義理の父によると、名器は非常によく似ているし、さりげなく描かれている器も適切なものなのだそうだ。

へうげもの(1) (モーニング KC)

へうげもの(1) (モーニング KC)

シグルイ山口貴由

残酷無惨時代劇。超人的な強さの剣士たちがみんなキチガイで切り合って臓物が飛び散るマンガ。これほど面白くこれほど家に置いておきたくないマンガははじめて。
キチガイと言っても行動に脈略がないとか意味不明のことを話すとかそういうことではなくて、ただみんな著しく偏っているというだけなので、理解はできるし、それが魅力的に映る。
ともかく虎眼先生の魅力がすごい。超強くてぼけててすぐ怒る。

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)

北神伝綺』、『木島日記』森美夏

昭和初期、戦争直前の日本のオカルトを描く。宮沢賢治とトシとマヨイガ(イーハトヴ)、怪人赤マントと江戸川乱歩、人魚、UFO、2・26事件、津山三十人殺し等々。狂言廻しはそれぞれ柳田國男折口信夫という民俗学者北神伝綺の主人公は兵頭北神で柳田國男の破門された弟子、木島日記は木島平八郎で架空の研究機関所属。それぞれ柳田、瀬条機関を通じて国家と繋がっている。
この時期の日本は無謀な戦争に向けて誰もブレーキをかけられない状態で、国の上から下までみんな熱に浮かされてた。そういう時期だから、国が異常な研究にいれ込んでいたとしてもおかしくはない。そういう異常なことに異常な情熱を注ぐと異形の状態が現れてくる。そういうのが描かれる。
森美夏は本当にきれいな絵を描く。ちょっと捉えにくいけど特異な構図でめまいがしそうになる。これが話の内容によくマッチしている。
大塚英志原作なんで、『多重人格探偵サイコ』や『マダラ』シリーズなど他の作品とも関連するが、そのへん知らずとも楽しめる。

北神伝綺 (上) (角川コミックス・エース)

北神伝綺 (上) (角川コミックス・エース)

木島日記(4) ニュータイプ100%コレクション

木島日記(4) ニュータイプ100%コレクション

『元祖ロッキン・ラヂヲ』和田ラヂヲ

ギャグマンガ。4コマか1Pが基本。シュールだと思うけどあまりに下らない駄洒落ネタもあるがストレートすぎてかえってシュールな趣がある。
ちょっとギャグマンガは伝えづらいので諦めた。ここで読める。
http://www.s-manga.net/author/radio_wada.html

蒼天航路』李学仁・王欣太

曹操孟徳を主役に据えて描く三国志。人物がとにかく魅力的。夏侯惇、王としての自覚を持つに至る夏侯淵曹操にくっついて守る許褚呂布関羽の武を追い求める張遼、愚直に前進する楽進、おもしろ武器の李典、曹操の頭脳として大戦略から人材発掘まで献策した荀紣、荀攸、激してこそよく語り生涯軍師の郭嘉程碰曹操の作った自由のなか激情のまま名文を書き散らす曹植、新時代を誰よりも理解しているギャル夫何晏、儒に殉じる孔融と、曹操側でもこれだけの人物がいる。説明書いてない人も魅力的なんだけど説明できないのが残念。
その人たちを惹き付け、またそのような魅力的な人を見つけて登用する曹操がいる。各人三国志のような文字通り激動の時代に栄達するのに十分な説得力がある。
人をたっぷり描いている一方ものごとの経緯はそれほど詳細には書かれてない。横山光輝のが読みたくなった。

蒼天航路(1) (モーニング KC)

蒼天航路(1) (モーニング KC)

ファイブスター物語永野護

SFおとぎ物語。主人公が神様だから実現性の考証なんて意味のないようなSFなんだけど、設定がもの凄く作り込まれていて社会のあり方からロボットの設計まで考え込まれたものが物語のベースになっていて、完成された世界の話としてそこに没入できる。
マンガの中で起こることは1巻巻末の年表に全部書いているし、マンガの流れも時系列順じゃなくて過去に行ったり未来に行ったりその時間外に行ったり。
話がどうなってしまうのというところを楽しむのではなくて、話のディテールを楽しむ。そういう意味だと歴史的な楽しみ方なんだと思う。

ファイブスター物語 (1) (ニュータイプ100%コミックス)

ファイブスター物語 (1) (ニュータイプ100%コミックス)

『ドラネコシアター』餅月あんこ

可愛らしいギャグマンガ。テスト勉強中についつい読み返すマンガNo.1。たぶん今までで一番読み返したマンガなんじゃないだろうか。かわいくてゆるくてシュール。
ファミ通に連載されていたんでゲームネタが多いけど、回を重ねるごとにゲーム関係ないネタが増えてくる。
最近更新されてないがブログに絵があるのでこれで雰囲気掴めるんじゃないかと思う。
http://blog.so-net.ne.jp/dir_anko/2006-07-04
こっちはレシピだけどこれもかわいい。
http://blog.so-net.ne.jp/dir_anko/2006-07-08

ドラネコシアター (Final collection) (Beam comix)

ドラネコシアター (Final collection) (Beam comix)

☆4つ

以下、感想が雑で書影もなくなる。繰り返しになるが、同じ☆数でも上に書いた方が高評価です。

ぶっせん三宅乱丈

つきぬけてバカで面白い

彼氏彼女の事情津田雅美

雪野編がよかった。容姿端麗成績優秀の女の子が主人公なのに、その子が友達をつくる過程がよかった。

『大奥』よしながふみ

時代ものかと思ったら設定に驚いた。描かれる舞台がとてもおもしろい。

ストッパー毒島』、『BECKハロルド作石

BECKの早く読めること読めること。1冊15分くらいで読めてしまう。このスピード感が音楽、とくにロックを題材にしたこのマンガのキモなんじゃないかと思う。

『魍魎戦記マダラ』、『多重人格探偵サイコ田島昭宇大塚英志

マダラは昔のメディアミックス作品で、アニメもゲームも最初から視野に入れて作られたマンガ。マンガ自体もゲームっぽくパラメータが出たりしてるけどあんまり関係ない。一作目はいわば神話で、それに縛られた2、赤のほうが面白く読める。関連作品をモリモリ出す大塚商法は卑怯。
サイコは猟奇事件とプロファイリング、そして多重人格と、1990年代末当時の流行をきれいに捉えていたが、最近話の核心に向かうごとにダレてきた。大塚英志が小説版のあとがきで書いていたけど、時代とともに消費されるマンガだと思う。今から改めて読むことは勧めない。

☆3つ

『リアル』、『バガボンド』、『スラムダンク井上雄彦

リアルは最近車イスバスケマンガになってきている気がする。障害者のありようとか、障害者との付き合い方とか、そういうのを聖人君子のように見るステレオタイプとは違う、ありのままを描こうとしているんだとおもう。そのへんはおもしろかったし、ただの車イスバスケでも面白い。
バガボンドシグルイを動とするとこちらは静という風情。シグルイは殺し合い、バガボンドはスポーツ。そのようなふうに読める。イチローがからだの動かし方がどうのという話をどこかでしていたが、バガボンドの剣はそれと同じよう。
スラムダンクは通して読んだことはない。悔しいです。

『ブルーヘブン』、『地雷震高橋ツトム

高橋ツトムの人が極限状態で晒す姿というのがよい。
鉄腕ガールも読みたい。

ぼのぼのいがらしみきお

ほのぼの哲学マンガ。哲学的なことを書いているわけじゃなくて、結構日常的な4コマばかりなんだけど、そこに哲学を感じるというのは自分たちが日常思っているけどあんまり表に出てこないようなことが、このマンガを読んであぶり出されているんじゃないかと思った。

デトロイト・メタル・シティ若杉公徳

デスメタルぶりより渋谷系ぶりの方がよりおもしろい。あとクラウザーさんへのファンのリアクション。

『ピンポン』、『青い春』松本大洋

松本大洋はオシャレ系みたいなイメージがあるけど、この二つのマンガはよい青春マンガだった。

ハッピーマニア』、『ラブ・マスターX』、『働きマン安野モヨコ

ハッピーマニアはよい。フクちゃんのハッピーマニアのセリフはこういう女性の業を的確に表した名ゼリフだと思う。ギャグも面白い。
ラブ・マスターXは以前グラスホッパー・マニュファクチュアの須田剛一紹介記事で郊外の新興住宅地を描いた作品としてHIROMIXやムーンライト・シンドロームなんかと並べられて書かれていたのでそう読んじゃうんだけど、その新興住宅地の不健全さ、おもてづらは壁に仕切られた核家族なんだけど裏ではたいていの秘密は筒抜けで、でも表ではそれを知らないように振る舞うというその不健全さがこわい。そりゃあその毒でブサメンがイケメンにもなるし超能力で空を飛ぶというものだ。

蟲師漆原友紀

昔の日本が舞台。怪異を起こす妖怪的存在として蟲がいる。でも蟲は妖怪というよりウィルスに近くて、それに対処する医者にあたる蟲師が主人公。怪異も淡々と受け止める昔の田舎の人というのがよい。自慢にもならない自慢だけど話題になる結構前から読んでたからね僕は。

新世紀エヴァンゲリオン貞本義行

アニメより設定とか謎の答えとかがわかりやすい。貞本シンジくんは結構男らしい。

『はじめの一歩』森川ジョージ

80巻を越えても話の骨子は変わらず、伝統芸能のような風情。宮田くんとの絡みは全編を通す大きな流れとしてあるんだけど、それはそれとして一戦ごとに試合前の前振りストーリーがあり、試合があり、一歩が練習がんばったから勝つ。真柴−沢村とかよかったな。

銀魂空知英秋

幕末の動乱の頃宇宙人がやってきて幕府と手を組んで日本を支配していると言う設定のマンガ。ギャグといい話の入り交じり方が若くていい。

20世紀少年』、『PLUTO浦沢直樹

続きが気になってぐいぐい読ませるっていうところではすごいと思うけど、読み終わったあとには何も残らないというところもすごい。

のだめカンタービレ二ノ宮知子

若くしてもの凄い競争社会で狂ったように音楽に打ち込むような人はやっぱり偏っているし、その上にも偏ったままのひともいるんだけど、それはそれとして人付き合いをするさまは面白い。

南国少年パプワくん柴田亜美

ギャグマンガからシリアスバトルマンガ、そしてバトルもなくなって男だけのドロドロ家族模様のマンガになる。その辺のぐちゃぐちゃがきれいに収束するのがきもちいい。

少年エスパーねじめ尾玉なみえ

子どもギャグ。ツッコミも子どもなうえ立場が弱いので子どもギャグのまま進んで行くさまがカオスを生んで面白い。

『雷火』藤原カムイ

国を知らないライカ邪馬台国、狗奴国と関わって行く中で国というものを見いだしていくはなしかと期待したら少しがっかりした。話のベースに日本のその頃の歴史が精密に描かれているけど、その上では超人的な人たちが勧善懲悪の話を展開する。

金色のガッシュ!!雷句誠

人間界に来た魔物と人間のコンビでの魔法バトルまんが。勢いだけのギャグに惹かれて買ったら泣かされそうになること火のごとし。魔法バトルでは人は死にかけるし魔物も死にかける。魔物はどんだけ死にそうになっても、死ぬ前に本を燃やせば生きたまま魔界に戻れる。ので、何かにつけて魔物が魔界に帰ることと引き換えに仲間を助けたり敵と刺し違えたりするんだけれども、その先に待っているのは人間界、コンビを組んでいる人間との別れ。また人間と魔物が互いを補うようないい関係を築いていたりするんだ。最近のフォルゴレとキャンチョメなんてつらすぎる。

『Quiz』浅田寅ヲ

サイコサスペンスが流行っていた頃のドラマがマンガ化されたもの。サイコっぽいのはどちらかというと刑事だったりするのだが、被害者家族の一般からちょっとずれてしまったくらいのサイコぶりが怖かった。

ONE PIECE尾田栄一郎

話のパターンは、あたらしい島に行ってその島のごたごたに巻き込まれたり首を突っ込んだりして、敵対勢力のメンバーとルフィのメンバーが1対1で戦って最後敵の大将とルフィが戦う。たまに仲間が増えつつその繰り返し。海軍との絡みとかルフィのお父さんとかポーネグリフとか失われた100年とか、物語を貫く要素は多々あれどそれほど進展しない。最終回へ向けたエピソードまではこの調子で続くんじゃなかろうか。いつからか、ちょっと絵がごちゃついてきて読みづらくなった。でもその島でたまった鬱憤がルフィの戦闘ですっきり解消される爽快感は相変わらずよい。ドン!というのもきもちがいい。

リヴァイアサン衣谷遊大塚英志

終末を迎え損ねた世界というのが面白い。この世界はいったいどうなっているのと言う、その根底部分が曖昧なまま、たまにその一端が見えたのか、それとも見えてないのか、そういうところが揺らぐ感覚がいい。

おるちゅばんエビちゅ伊藤理佐

直接的な下ネタマンガ。バカと下ネタとかわいい動物という組み合わせがいいんだろうと思う。おもしろい。

☆2つ

DEATH NOTE小畑健

頭脳戦なんだけどご都合主義に見えちゃうのはなぜだろう。ライトの悪ぶりはおもしろい。

『バクネヤング』松永豊和

バクネという超人的な人が大阪城に立てこもって金を要求したりして、いくつかの勢力がそれと戦うというような筋。戦う相手を特別視することが相手を超人化させるという話。

『MADARA<青>』花津美子・大塚英志

マダラ1の人物がそのまま使われている別の話。少女漫画。話の筋はわりとどうでもいいけどユダヤとカオスが魅力的。

『ユウジローのつづけていいの』ユウジロー

言葉遊びギャグマンガ。下手で変な絵。

ふしぎ遊戯渡瀬悠宇

中国ベースのファンタジー空間に女子中学生が迷い込む少女漫画。むちゃくちゃして面白いなあと思いました。

最終兵器彼女高橋しん

とんでもない設定なんだけど、それがメインではなくて、そんな状況化での思春期の男女の恋愛模様がメイン。だからSF的な詳しい話はまったくない。世界の情勢とかもほとんどわからない。ほのめかされる程度で、キッチリ考えられているとも思えない。そっちのほうが気になってしまったのであんまり面白くなかった。

『JAPAN』伊藤真美大塚英志

日本が世界から禁忌の国にされているという話。主人公はミカドの血を引く人。扱う題材は面白かったと思う。

『東京ミカエル』堤芳貞・大塚英志

バトルロワイヤルみたいな設定。〜才の国というのは面白かったと思う。

☆1つ

ハトのおよめさん』ハグキ

1巻だけ読んだ。初めて失敗したと思ったマンガ。何も面白く思うところがなかった。