司馬遼太郎『空海の風景』を読んだ。

2ヶ月ぐらいかかって読み終わった。小説だからザクザク読めるかと思ったのに。
坂の上の雲』でも思ったけど、司馬さんはきっちり研究して、その上にフィクションを乗せる。だから、想像上の空海のセリフに、強い説得力がある。論文と言ってもいいんじゃないの。
空海と言えば密教で、空海の小説だから密教によほど近くて、ある程度密教の根本がわかったような気になったのだけど、それは密教ではいけないことだということもわかった。
この時代の人はそうなのか、司馬さんが書くからそう見えるのかわからないが、登場人物は皆個性が強い。生真面目で世渡りが下手な最澄とか、サロン好きな嵯峨天皇とか、コンプレックスの固まりの橘逸勢などなど。それぞれこの時期の国の重要な地位を占める人たちで、そんな立派な人たちなのに人間臭い。
最澄をおもくそ罵倒した部分についてはさわりさわりで書かれなかったので、そこが気になる。

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)